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19.01.29
幹細胞治療

培養した幹細胞の数と質が幹細胞治療の成否を握る

自分の身体に備わっている成体幹細胞を採取・培養し、損傷した患部に投与して治療する幹細胞治療は、手術による治療を避けたい患者さんから大いに注目されている治療法です。
幹細胞治療は血液検査、組織採取などさまざまな工程で行われますが、中でも治療の要となるのが採取した組織から幹細胞を分離し、培養・管理する工程です。治療に必要な数を確保するとともに、高品質な幹細胞を培養することが、幹細胞治療のキーポイントとなるからです。

本コラムでは、幹細胞治療の流れを追いながら、幹細胞治療における培養・管理の重要性についてご紹介していきます。

間葉系幹細胞を培養、5000万個~2億個まで大量に増殖させて治療に臨む

幹細胞治療は、最初に担当医が患者さんの膝の状態や治療歴、常用薬の種類などについてヒアリングし、患者さんの全身健康状態を把握するところからスタートします。次に細菌・感染症の有無を調べるために血液検査をして、幹細胞治療が可能かどうかを判断します。

幹細胞治療を受けられると判断されると、腹部の脂肪組織を米粒2~3個ほど採取し、同時に細胞の培養に必要な血液も約100cc採取します。そして、採取した脂肪組織から骨髄や脂肪組織など複数の細胞に分化できる間葉系幹細胞を抽出します。この間葉系幹細胞は、本来は患部に投与すれば組織を再生する能力は持っているのですが、そのままの状態では数が限られていて、実際の治療に使っても効果が出ません。そこで特殊な培養皿で培養し、幹細胞の数を増やしていきます。

そのためには、細胞の培養に必要な栄養を与え、温度や酸素濃度などを適切に管理しなければなりません。栄養を与えるタイミング、培養皿の大きさの管理などに細心の注意を払う必要があるのです。患者さんから採取した幹細胞は、患者さんごとに個性を持っていて、その個性にあった培養が必要となり、専門の培養士による高度な技術が求められます。このようにして、約3週間後には5000万~2億個程まで培養します。

専門的な技術で高品質な幹細胞を作り出す

幹細胞治療を成功させるためには、間葉系幹細胞を治療に必要な数まで培養すると同時に、高品質な幹細胞を培養することが重要になります。大量に幹細胞を培養するとばらつきが出て、品質が一定に保たれないという問題も発生しかねません。そのため、培養条件をコントロールし、常に同じ環境で培養を行うなど、「数」と「質」を両立させることが幹細胞治療を成功させるカギになります。幹細胞を培養すると、細胞を成長させる成長因子やサイトカインという物質が分泌され、患部の修復を図ると考えられていますが、そのためにも量と質を兼ね備えた幹細胞を作ることが求められています。

ここで良質な幹細胞を培養する難しさを知っていただくために、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の培養について触れておきます。iPS細胞は神経細胞、心筋細胞、肝細胞、血液細胞など、あらゆる細胞に分化できる幹細胞で、皮膚の繊維芽細胞などを採取し、特定の遺伝子を注入し培養して作ります。しかし、目的の細胞に分化させようとしても培養の条件に少し問題があると、目的の細胞に分化しきれずに他の種類の細胞に分化してしまう恐れがあります。こうした細胞が治療に使われるとがん化するリスクが高いとされており、いかにして目的の細胞に分化させるかが重要な研究テーマになっています。

自分の身体にある間葉系幹細胞を培養し、再び自分の患部に投与する幹細胞治療では、特定の系列の細胞にしか分化しないためがん化のリスクも低く、iPS細胞の培養に比べると難易度は下がります。それでも先に述べたように、専門的な知識と技術によって培養されて初めて高品質な幹細胞を作ることができるのです。

厳密な管理の下で凍結保存し、患部に投与する

治療のために必要な数と品質的にも優れた幹細胞が培養できたら、そのまま患部に幹細胞を投与するのではなく、いったん凍結保存し、治療のために患部に投与される日まで厳密に品質管理されます。したがって培養された幹細胞は、新鮮で活力に満ちた状態で患部に投与されるため、最大の効果を発揮できるのです。

一般的に組織や細胞の凍結保存には凍害が生じる恐れがあるとされています。凍害とは細胞など生体組織の凍結保存中に細胞の内外の浸透圧が変化し、細胞内の水分子が結晶化して細胞膜が壊れてしまうことを意味します。現在では技術も進化しており、厳密な品質管理の下で凍結保存された幹細胞を解凍し、患部に投与して、安全で人に優しい幹細胞治療を行うことが可能になりました。幹細胞を大量にしかも高品質に分化させ、凍結保存を可能にしたのは、多くの研究者・技術者・医療関係者の長年にわたる研究の成果といえます。幹細胞治療に関心を持つ患者さんは、幹細胞治療の要は幹細胞培養における「数と質の両立」であることを知っておけば、新しい視点から幹細胞治療に目を向けることができるでしょう。

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